研究概要 |
1. 不純物がタンパク質結晶のステップ前進速度に及ぼす効果について 純度が99.99%のリゾチーム試料, および本試料に意図的に不純物タンパク質を加えた試料を用いて, リゾチーム正方晶系結晶{110}面上の単位成長ステップの前進速度を, レーザー共焦点微分干渉顕微鏡で測定した(LCM-DIM). また, 蛍光ラベル化したリゾチームモノマーおよびダイマーの1分子観察を行った. その結果, テラスにランダムに吸着するダイマーの場合には, 過飽和度の増加とともに結晶表面の溶液に対する露出時間が減少する為, 不純物効果は単調に減少した. 一方, ステップに選択的に吸着する蛍光ラベル化リゾチームモノマーの場合には, 過飽和度の増加に伴い不純物効果は単調には減少せず, 低過飽和度領域下で不純物効果が一定の領域が存在することを見出した. また, この違いを, 不純物の吸着サイトに違いによって説明することに成功した. 2. タンパク質の結晶化におけるゲルの利用と不純物効果について 通常の溶液とアガロースゲル溶液中で, 純度が99.99%および98.5%の試料を用いて, リゾチーム正方晶系結晶の2次元核形成速度およびステップ前進速度をLCM-DIMで測定した. その結果, ゲルがリゾチーム結晶と良い親和性をもつため, 不均一核形成サイトとして働くこと, およびステップの前進を妨げないことを見出した. また, ゲルは不純物の結晶表面への輸送を抑制し, 不純物フィルターとして働くことを明らかにした. 本研究では, これまで別々に議論されていたゲルの効果を, はじめて定量的に実証することに成功した.
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