研究概要 |
安熱合成法による高品質GaNの厚膜成長を目的とし、触媒を用いたアンモニアのクラッキング状態の最適化を行った安熱合成法において、種結晶設置場所にアンモニア合成・クラッキング効果が期待できる金属片を触媒として吊下げ、触媒がGaN原料の溶解・析出に及ぼす影響を知るための"触媒吊下げ実験"と、種結晶と触媒を同時に設置し触媒が結晶育成速度へ及ぼす影響を知るための"触媒効果実証実験"とを行った。触媒吊下げ実験は、オートクレープ内にGaN原料と鉱化剤を加え、結晶育成領域に触媒金属片を吊下げ、アンモニアを所定量充填し、550℃,130MPa程度で4日間保持することにより行った。触媒の効果は、実験前後のGaN原料の重量差から検討した。触媒としてタングステン(W)、タンタル(Ta)、タンタル-タングステン合金(Ta-2.5%W)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、白金-イリジウム合金(Pt-20%Ir)、Ni系合金(Alloy625,Rene41)を用いた。触媒吊下げ実験の結果、オートクレープ構造材料であるNi系合金を触媒に用いた際の実験前後におけるGaNの重量変化が僅かであり、原料の溶解・析出量が極めて小さいことが分かった。一方、WやRuを用いた時の原料の析出量は5〜10倍に増加した。これにより、適切な触媒を用いることで結晶育成速度が向上する1ことが明らかになった。触媒吊下げ実験の結果を基に、触媒効果実証実験を行った。ここでは、種結晶(GaN)と触媒金属を同一に設置し、種結晶上への結晶成長速度から触媒効果を検討した。触媒には、触媒吊下げ実験から結晶成長速度の向上が期待できるW, Ruと、オートクレープの腐食防止として内壁のライニングに用いられているPt-20%Irを用いた。触媒を用いない時の結晶成長速度はGaN種結晶-c面上に1.60μm/日であるのに対し、W触媒使用時の結晶成長速度は20.25μm/日が確認され、触媒により結晶成長速度が向上することを明らかにした。触媒を用いた厚膜化を試み、4日間成長で85μmのGaN作製に成功した。
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