これまでの研究で、透明な石英基板上に厚さ500nmを超える多結晶BaSi_2膜、多結晶Ba_<1-x>Sr_xSi_2膜を形成し、光吸収特性を評価したところ、Sr添加に伴い禁制帯幅が1.4eVまで拡大するとの実験結果を得ている。この実験をさらに進めてデータ点を増やし、Sr添加に伴う禁制帯幅拡大を実証することを目的に実験を行った。その結果、Ba_<1-x>Sr_xSi_2膜のSrSi_2モル分率が0.77まで大きくなると、X線回折測定から、形成した膜はBaSi_2とBa_<1-x>Sr_xSi_2に組成分離することが明らかになった。これは、BaSi_2のBaサイトを100%Srで置換したBaSi_2型のSrSi_2が室温で安定に存在しないためと考えられる。さらに、Ba_<1-x>Sr_xSi_2膜の間接光学吸収端は、SrSi_2モル分率が0.5までは線形に増加するが、それ以上モル分率が増加しても、間接光学吸収端は増加せず、飽和することも分かった。 次に、BaSi_2へ不純物をドーピングして伝導型を制御する実験を行った。不純物としては、III族のInおよびGaを、さらに、I族のCuを選び、不純物をドーピングしたBaSi_2をMBE法にて、高抵抗Si(111)基板上にエピタキシャル成長し、Hall測定を行った。その結果、Cuをドーピングした際にはp型に、また、同じIII族でもInの場合にはp型を示したが、Gaの場合にはn型になった。Gaをドーピングした場合には、比抵抗の温度特性から、ホッピング伝導と考えられるため、伝導型制御のための不純物としては相応しくないことが判明した。特に、Inの場合には、正孔濃度がInのドーピング量にともない1cm^3当り10^<16>から10^<17>後半まで制御でき、今後より詳細な検討を行う予定である。
|