本研究では、資源が豊富な元素で構成されるBaSi2を用いて、その特徴である禁制帯幅が太陽電池にふさわしい1.4eVに制御できること、さらに、光吸収係数が結晶Siに比べて2桁大きいことを利用することで、薄膜結晶太陽電池を作成することを目的とする。最終年度は、Si(111)基板および(111)配向Si膜を有するSiO2基板上に、分子線エピタキシー法によりBaSi2膜を堆積し、分光感度特性および外部量子効率を評価した。Si(111)基板上にBaSi2膜(900nm)を分子線エピタキシー法でエピタキシャル成長し、棒状AI電極を1.5mm間隔で蒸着した。この試料の分光感度特性のバイアス電圧依存性を室温で評価した。その結果、BaSi2の禁制帯幅に近い約1.25eV付近から明瞭に立ち上がる特性が得られ、バイアス電圧の増加とともに分光感度も向上した。1.7eVの光子に対し、2Vで外部量子効率は2%に達した。この実験では、光照射により発生したキャリアを電極間の電場で引き出した。したがって、バイアス電圧を大きくすると、キャリアのドリフト速度が増加し、欠陥で再結合する前に電極に到達するキャリアが増えた。BaSi2pn接合では、より大きな電場(〜104V/cm)が存在し、`キャリアの走行距離も短いため(〜1μm)、より大きな外部量子効率が期待できる。続いて、SiO2基板上にAi誘起層交換法により、9o%以上の領域で(111)配向したSi連続膜を得た。さらに、(111)配向Si多結晶膜上に、分子線エピタキシー法により、多結晶BaSi2(300nm)膜を堆積した。下地のSi層は(111)配向していたが、表面が荒いためか、BaSi2はα軸配向しなかった。棒状Al電極を1.5mm間隔でBaSi2膜表面に蒸着し、室温で分光感度特性を測定したところ、BaSi2エピタキシャル膜と同様に、約1.25eVから立ち上がる明瞭な特性が得られ、Si(111)基板上のBaSi2エピタキシャル膜と比べて、外部量子効率の点でも遜色ない特性を得た。
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