アゾベンゼンを骨格構造に含むポリイミド(Azo-PI)光配向膜を分子配向テンプレート基板として用い、有機半導体分子の配向制御を行った。また、そのキャリア移動度の測定を行った。 有機トランジスタ用の高分子材料として注目されているフルオレン-ビチオフェンコポリマー(F8T2)の一軸性高配向膜を作製した。Azo-PI骨格構造に沿って分極している吸収バンドの二色比が2以上を示す光配向膜上にF8T2膜をスピンコートし、それを285℃で15分間加熱後、室温まで急冷することによって、F8T2骨格構造のπ-π^*遷移に帰属される吸収バンドの二色比が14を示すF8T2膜を作製することに成功した。現在、光配向膜を用いて形成した高配向F8T2膜のキャリア移動度を測定するためにボトムゲート・トップコンタクト型の高分子電界効果トランジスタ(FET)の試作・評価を行っているが、FET動作は確認できていない。F8T2/Azo-PI界面の特性改善、FET素子構造の最適化が必要であると考えている。 低分子有機半導体材料として注目されているペンタセンの分子配向制御を行った。Azo-PI骨格構造に沿って分極している分子振動の赤外吸光度の偏光比が6を超える光配向膜上に、ペンタセン分子を真空蒸着するだけで、異方的なペンタセンの分子配向が誘起された。ペンタセン薄膜の偏光赤外吸収スペクトルから、Azo-PI骨格構造の平均配向方向に対してペンタセンの分子面が垂直になるように配向していることがわかった。しかし、光配向膜上のペンタセンの配向挙動は複雑であり、両者の分子配向の関係を詳細に調べ、配向メカニズムを明らかにする必要がある。また、分子配向を制御したペンタセン薄膜トランジスタのキャリア移動度は低く、ペンタセン/Azo-PI界面の特性改善が必要である。
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