本研究では、次世代の高密度かつ廉価なメモリー素子として期待されている有機メモリーの創製を目指し、その有機薄膜の構造制御とメモリー特性との相関を明らかにするべく行われた。従来、有機メモリーはその動作機構の不明確さ故に、研究および技術開発が進んでいないのが現状である。それを打破するべく、有機薄膜中での積極的な構造制御という観点を新たに導入し、特に高分子骨格構造の制御、微粒子の配列制御などの新しい技術に取り組み有機メモリーの創製への新たなシナリオを模索・検討した。 まず、ホール輸送性材料であるカルバゾール基を側鎖に有するセルロース骨格の新規合成高分子を用いて、透明電極およびアルミニウム電極で挟み込んだ単層型デバイスを作製した。ON/OFF比の高い安定なメモリー特性を確認することができ、更に電子輸送材料のドーピング量でヒステリシス曲線の制御が可能であることを明らかにした。 また銀微粒子積層膜の構造制御による有機メモリーに関しては、有機層で挟み込む銀微粒子層数が増えるに従って、メモリー特性を示すヒステリシス曲線が安定になり更にその面積が大きくなった。即ち、微粒子量の増加により電荷量が増え、それにより電荷の出入りに大きなバイアスが必要となった事を示している。微粒子層が構造制御されている為に再現性良くヒステリシス曲線の増加傾向が見られたと考えられる。
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