研究概要 |
本研究では表面磁気抵抗測定装置を世界に先駆けて開発し,超高真空下で固体表面上に作製した金属量子薄膜,金属単原子層,金属原子鎖列などについて,そのまま真空層内でin situの磁気伝導測定を行い,これら低次元原子構造体の輸送特性を調べる。昨年度までに装置全体を組み上げ,磁場の印加,低温冷却,そして簡単な電気伝導測定評価を行った。今年度はさらに超高真空下での表面,超薄膜測定という特殊な環境下での実験上の問題点を洗い出すために,金属超薄膜(Bi)や半導体結晶表面試料(Si)などの表面系の標準試料について実際に電子輸送測定を行った。これらの結果を元に,より効率的な冷却のために,冷却クライオスタットを大幅に改造した。また良質なサンプル表面を作製するための試料準備チャンバーを本測定装置に合うように設計し,立ち上げた。 本装置では2つのSTM探針を独立して駆動することができる。そのため世界にこれまで例のない,極低温,高磁場中での独立駆動型多探針STMの仕様を満たしているため,このプローブ技術開発の最前線にも立っている。そこで本グループがこれまで独立駆動型4探針STMで培ったノウハウを元に,本装置の制御システムを確立し,実際にこれを用いた2端子法によって電気抵抗の温度依存性の測定に成功した。 本研究では,測定対象として次世代ナノスピントロニクスを支えるRashba系金属表面及び超薄膜を扱う。それら試料表面のフェルミ面及びバンドマッピングも開発と同時に進行して行い,それらの結果を国内外の招待,セミナー講演や論文で報告している。今年度は研究代表者である松田巌にこれまでの研究功績から日本物理学会若手奨励賞が授与された。
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