研究概要 |
スピン偏極BEEM/BEES観測技術の開発を推進し, この観測技術を活用して磁性層中のスピン依存伝導を局所的に観測する技術を確立し, 特に, 半導体/磁性体界面におけるスピン依存トンネル現象における界面の影響を明らかにすると共に, スピン依存トンネル現象を促進させるための表面・界面制御を実現することを目的として研究を進め, 以下の成果を得た. まず, 前年度に導入した液体窒素シュラウドを装備した分子線エピタキシーチェンバによるGaAsの成長・観測条件の最適化を行った. その結果, 成長終了後に残留As圧を急速に下げることが可能となったことにより, STM観測時の表面の余分な付着物が減少し, 原子レベルの平坦性が改善され, STM像が改善されたことを確認した.次いで前年度に引き続き, GaAs c (4x4)α表面上のMnの初期成長表面の観測を行い, MnAsの堆積の時観測される表面再構成構造の変化に起因する成長膜厚の異常は, 観測されないこと, さらに, Mnの0.5ML堆積時から, 閃亜鉛鉱状の表面からGaMnと考えられる金属的な表面状態に移行することを見いだした. さらに, GaAs c (4x4)α表面上のCrAsの初期成長表面の観測を行い, MnAs成長の場合と大きく異なり, 成長核間の距離が極めて近く, また,第一層の成長が完了する前に2層が成長する3次元的な成長を示すこと, 第2層以上では, c軸が面内に平行で,基盤のGaAsの[1-10]方向を向いたMnP型CrAsが形成されることを見いだした.
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