研究概要 |
研究開始初年度に当たる本年度は,現有設備である阻止電界型Mott散乱検出器を備えた電界放射顕微鏡(Spin-FEM)装置に,スピン偏極陰極試料の冷却機能を付与するために,平成18年度設備備品として計上したヘリウム冷凍機を搭載する鏡体改造を行った。これにより,現状では30Kの極低温から200OKの高温まで連続的に温度可変でき,スピン偏極度の温度依存性が測定可能となっている。スピン偏極陰極試料としては,現在2つの材料を検討している。その1つはタングステン針先端にCVD法で直接合成した多層カーボンナノチューブ(CNT)であり,高い結晶性およびバリスティック伝導のコヒーレンス長(数100nm)以内の適度な長さを持つCNT合成条件を探索中である。2つ目は,フェルミ面上での電子スピンが理論的に100%偏極しているハーフメタルであり,現在タングステン針先端表面にフルホイスラー合金であるCo_2MnSi三元合金薄膜を堆積させた電界放射陰極を検討している。予備実験の結果では,室温かつ無磁場での動作条件で30%程度の偏極度が観測されており,次年度にはこの薄膜の結晶構造,組成を正確に制御した陰極試料の作製を試みる。
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