研究概要 |
平成18年度に製作したSpin-FEM装置を用いて,新日鐵(株)の岡田から提供されたFe_3O_4単結晶(マグネタイト)ウイスカーを陰極試料として、これから電界放射された電子のスピン偏極度測定を行った.マグネタイトはハーフメタル特性を持つことが最近理論予測された材料であり、岡田らは良質な単結晶ウイスカー合成と集束イオンビーム装置を用いたマイクロサンプリング技術による単離・陰極試料作製に成功している.試料温度を可変して測定した結果、室温では約15%のスピン偏極度を示したものの、温度低下とともに徐々に偏極度は減少し、更に約130Kで不連続に4.5%まで減少した.この現象は、マグネタイトで従来知られている金属-絶縁体転移(Verwey転移)が観測されたものと思われ、温度低下とともにスピン偏極度が低下する挙動は通常の強磁性/反強磁性体とは異なるものである.Verwey転移の起源は未だ未解決の問題であるが、我々の電流-電圧特性の測定結果は、従来の電荷秩序モデルを支持した.ただし、電荷配列は依然不明である.
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