研究概要 |
Alと高誘電率絶縁物であるAl化合物(AlN)に含まれるAl原子のAl1s光電子スペクトルおよびAl2p光電子スペクトルを,Spring-8の硬X線光電子分光施設を用いて高分解能で測定した.スペクトル解析によってケミカルシフトΔE1sとΔE2pを求め,その差から相対的ケミカルシフト(ΔE1s-ΔE2p)を決定した.Al_2O_3については文献値のケミカルシフトΔE1sとΔE2pから相対的ケミカルシフトを決定した。その結果,これらAl化合物(AlN, Al_2O_3)においてもsi化合物(SiC, Si_3N_4,SiO_2)と同様に,相対的ケミカルシフト(ΔE1s-ΔE2p)と誘電率(ε)との間に相関があることを新たに見出した.また、相関直線の傾きはSi化合物とAl化合物では大きく異なることが分かった. 一方,既設のX線光電子分光装置に当研究経費でZr Lα X線源を付設して,従来から測定できた束縛エネルギー90eV程度のSi2p, Al2pに加えて,束縛エネルギー1600eV程度のSi1s, Al1sの光電子スペクトルを、十分な感度で測定できることを確認した.これによって,Si化合部ならびにAl化合物の標準試料の相対的ケミカルシフト(ΔE1s-ΔE2p)を,既設のX線光電子分光装置において簡便に求めることができる体制となった. 一方,測定で得られた相関の理論検討を始めた.初期検討において見出したΔE1s-ΔE2p∝(ε-1)/(ε+2)という一次の関係について,その理論的裏づけ作業ならび定量化を目的としている.当研究経費で導入した高性能コンピューター上に,第一原理計算プログラム(UVSOR, PHASE)をインストールして,初期動作を確認した.また,目標の原子数のモデルを短時間に計算できることを確認した.
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