研究概要 |
最終年度として,次世代LSIのゲート絶縁膜として開発が進んでいる,高誘電準絶縁膜とSiO_2膜のスタック構造である,HfO_2/SiO_2/Si構造のSilsおよびSi2p光電子スペクトルを,SPring-8の硬X線光電子分光施設を用いて高分解能で測定した,スペクトル解析によってケミカルシフトΔE1sとΔE2pを求め,その差から相対的ケミカルシフトΔE1s-ΔE2pを決定した.中間SiO_2膜の厚さにテーパーをつけて,相対的ケミカルシフトの膜厚依存性を求めた.そして,昨年度までに各種Si,Al化合物に対して測定で求めた,ΔE1s-ΔE2pと分極率との良い一次の相関直線から、分極率を求めた.その結果,膜厚0.13〜0.61nmの範囲でHfO_2膜やSi基板の影響を受けずに,中間SiO_2膜の分極率は変化せずバルクSiO_2とほぼ一致することが分かった.一方,昨年度始めた理論検討を進めた.光電子放出過程の励起状態で内殻正孔が作る電界によって誘起されるダイポールμに着目して次のように検討した.第一原理計算プログラムを用いて光電子放出過程の基底状態と励起状態の電子状態を計算し,マリケンチャージ解析法で励起状態時に増大する価電子電荷量Δnを求めた.そしてΔnと原子間距離rから,μをμ=Δnxrで求めることができると仮定した。SiO_2多形(quartz,zeolite,cristobalite,coesite,tridymite,stishovite)についてμを計算した結果,異なる分極率を持つこれらの化合物に対しても,その分極率(文献値)と極めて良い一次の相関を持つことが明らかになった.また多形間で分極率が異なる理由を本モデル計算を用いて考察したところ,同じ第一近接原子構造を持つ多形では,分極率は結合長で決まり,分極率は結合長が長くなると増大することがわかった.
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