本研究の目的は、偏光が放射状に分布した径偏光レーザービームを用いて、金属や半導体などの微粒子の光トラッピングを実現することである。そのため本年度は、まず安定で十分な出力を持つ径偏光レーザーの発振を目指した。安定性を高めるためには、使用する光学部品数を減らして、できるだけ簡便な構成の共振器とすることが望ましい。そのため、レーザー結晶自体が持つ複屈折性を用いる、新しい方式の径偏光レーザーを製作した。レーザー媒質にはc軸カットのNd:YVO_4結晶を選択した。これを半導体レーザーによるエンドポンピング法で励起したところ、約100mWの出力の径偏光レーザーの発振に成功した。さらに、Nd:GdVO_4結晶に対してエンドポンピング法を適用して、同様の出力を得た。この場合励起効率が約10倍に向上した。さらに、これらの成果をもとに、均一媒質であるNd:YAG結晶を用いた共振器内にノンドープのc軸カットYVO_4結晶を挿入したところ、2Wを超える径偏光レーザーの発振が確認された。光トラッピングの実験には通常約1Wの出力があれば十分であり、ほぼ必要とされるレーザー出力を達成することができた。また、このようにして得られた径偏光ビームは安定に出力されることも確認され、従来の干渉計法に比べて格段の改善が図られたといえる。現在、実用化を視野に入れて、さらなる性能向上を目指し、偏光選択性ミラーを用いた径偏光レーザーの開発を進めており、来年度の光トラッピングの実現に向けてほぼ準備は整ったと言える。
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