研究概要 |
我々は近接場光を用いたナノ寸法の光集積回路を世界に先駆けて提案し,これまでにその基礎理論,デバイス原理,ナノ光加工技術などの各種要素技術を開発してきた。本研究は,近接場光ナノデバイスのこれまでの実績を踏まえ,近接場光相互作用を用いて回折限界以下のナノスケールに機能を集積した超高集積システムの実現に向け,さらなる展開を目指す。情報爆発時代に要請される大量の情報通信や情報セキュリティなどの社会の新規要請を具体的に見据えつつ,近接場光相互作用を活用したシステムにおいて根本的に重要と位置づけられる問題に焦点を絞り,本年度は具体的には下記3項に取り組んだ。 (1)近接場光による光信号処理システムの自由度解明と応用探索 半導体量子ドットやナノロッド,金属ナノ構造などの実現技術について,我々が開発してきた湯川モデルに基づく近接場光の理論モデル等を援用し,近接場光相互作用を用いた信号処理システムにおける自由度を解析した。また,特にナノロッド作製の実験技術の高度化を図り,システム設計の自由度を拡大した。 (2)近接場光信号処理の特性評価 上記(1)の解析を踏まえ,近接場光相互作用で動作するシステムにおける基本原理に関して,その動特性を実験的に評価した。具体的には量子ドット間のエネルギー移動に関わる時間分解分光を詳細に行った。 (3)近接場光信号処理における階層構造の探求 近接場光信号処理における特徴的性質である近接場光相互作用の階層性について,マクロ領域とナノ領域の光接続の問題を含めて理論解析を深めるとともに,応用システムのアーキテクチャを検討した。具体的には,伝搬光と近接場光のそれぞれの階層における光学応答関数を用いる階層的光学素子を検討し,その基本原理について,各階層の光学応答を実験的に評価した。
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