本研究課題の目的は、シリコン細線導波路をベースとしたシリコンフォトニクス光機能回路の開拓を行い、高密度に光機能素子を集積したシリコンフォトニクス集積回路の実現に資することである。具体的な研究目標は、光機能回路には必須の発光素子として半導体レーザと反射戻り光の伝搬を防ぎ半導体能動素子の動作安定化に欠くことのできない素子である光アイソレータを、それぞれ単独でシリコン細線導波路上に形成することと、二つのデバイスをシリコンフォトニクス集積回路内で一体集積化する方法を開拓することである。本年度は、シリコン導波路を用いて光アイソレータと半導体レーザの個別素子試作について研究を進めた。 まず、干渉導波路型光アイソレータにおいて、多モード干渉カプラを用いた干渉導波路を設計し、干渉アームの損失均一化を図ることで、高い消光比を有するマッハツェンダ干渉計を形成した。そして、表面活性化ボンディング法を用いてシリコン・リブ導波路上に磁気光学ガーネットを直接接合し、干渉型光アイソレータを形成した。その結果、シリコン導波路において世界ではじめて光アイソレータ動作を実現することに成功した。試作デバイスにて得られた最大のアイソレーションは21dBであった。 一方、シリコン導波路上に半導体レーザを形成するために、酸素プラズマ表面処理による表面活性化ボンディングを用いて、GaInAsP発光層を含む化合物半導体をSi導波路上に直接接合することに成功した。前年度において形成した、波長選択反射特性を有するシリコン細線グレーティング導波路上にGaInAsP発光層を接合することで、半導体レーザへの展開が期待できる。
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