研究概要 |
本研究は,上記の新しい動作原理に基づくポテンシャル制御量子井戸として,非対称三重結合量子井戸を提案し,理論的に予測された極めて優れた電界誘起屈折率変化特性を実証するとともに,干渉型光変調デバイスを試作し,その有用性を示すことを目的とする.平成20年度は以下の成果が得られた. 1. GaAs/AlGaAs 五層非対称結合量子井戸マッハ・ツェンダー変調器の作製と評価:分子線エピタキシー法により作製し,その変調特性の評価を行った.その結果,半波長電圧・位相変調部長積(VpiL)は波長850nmで5.4Vmmと優れた特性を実現した.この値は,同時に作製した通常の量子井戸マッハ・ツェンダー変調器の約3倍の位相変調効率で,五層非対称結合量子井戸の有用性が実証された.波長依存性も測定し,830〜870nmの波長で屈折率変化量は,長波長側へいくほど小さくなるものの,理論予測と同様,大きな屈折率変化が生じることを明らかにした. 2. 長波長系InGaAs/InAlAs 非対称三重結合量子井戸構造の設計:長距離光通信波長帯である1.55ミクロン帯でも本構造を利用すべく,InGaAs/InAlAs 非対称三重結合量子井戸構造の設計を行った.その結果,|dn/dF|=1.33×10-3 cm/kVと,InGaAs/InAlAs 五層非対称結合量子井戸現構造の約2倍の屈折率変化が期待できることが明らかになった.すなわち,GaAs/AlGaAs 材料系のみならず,長波長帯用InGaAs/InAlAs 非対称三重結合量子井戸構造も極めて有望であることがわかった.
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