研究概要 |
本研究は,真空中に電子銃と光あるいはミリ波が伝播できる誘電体導波路を配置し,導波路表面から真空中に染み出した光やミリ波の一部を,電子銃から出射した電子ビームで励振し、光あるいはミリ波の発生器や増幅器の開発を目指しているものである。平成19年度には、入射光を用いない実験で、導波路に沿っての光放射を観測し、その波長分散特性や偏波方向が理論予測と一致していることを示した。そして、光放射の波長スペクトル形状から電子波動の相互作用長が電子間の間隔に一致していることを見出し、平成20年度は、1)光増幅率の増加、2)ミリ波増幅器の開発、3)THz放射源としての可能性検討、の課題を掲げた。 1) 光増幅率の増加:電子ビームの電流密度の空間分布を測定した。また、収束用の電子レンズを挿入した。しかし電子レンズでも電流密度が数倍程度にしか増加できなかった。さらに、放射光の電力やスペクトルなどについてより正確な測定を行い、電子緩和時間が10^<-10>秒程度であることを推定した。これらの結果、明確な光増幅を得るためには、電子銃の電流値を現有の物より数桁以上大きくする必要があることがわかった。 2) ミリ波増幅器の開発:電子ビームが導波路に吸引されずに、10cm程度まで走行させることが出来た。しかし、残念ながらミリ波の放射は観測できなかった。他研究所で発表されている実験データでは、我々より電流値が3桁大きい電子銃を用いており、電流値の増加が重要な課題となった。 3) THz放射源としての可能性検討:THz帯で実験する場合の、検出器などについて調査した。 本研究は、理論予測に基づいて実験を開始したものである。光放射のついては実測でき、電磁波の波長と電子の大きさとの関係など、動作メカニズムの解明は進展した。しかし、提案の装置を実現するためには、現有の電子銃より3桁程度電流値が大きな電子銃が必要であることが判った。
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