研究概要 |
液体窒素温度で動作する高温超伝導ビスマス系(Bi-2212)固有ジョセフソントンネル接合を用いたdc-SQUIDが開発されれば社会的なインパクトは大きいが、その研究は緒についたばかりである。本研究課題の主目的は,(1)申請者が開発した"希塩酸処理プロセス"を用いてdc-SQUID素子作製プロセスの確立、(2)作製した素子の磁場応答特性の評価等である。平成20年度は作製したBi-2212 DC-SQUIDの磁場特性の評価を行った。我々が開発したBi-2212単結晶を希塩酸(pH>1.4)に浸漬させて透明な絶縁体(BiC10)へ改質するプロセスはほぼ完成し,DC-SQUIDを再現性良く作製できており,数十回の熱サイクル(300K→77K)でも劣化はまったく見られていない。このデバイス作製工程には、本研究で購入した(株)ハイロックス社制ディジタルマイクロスコープ(KH3000VD)が大きな役割を果たしている。また,試作した多数個のBi-2212 DC-SQUIDの磁場特性を測定した結果,単接合では見られなかった周期的な変調パターンが得られた。しかし,絶対値の再現性に問題があり,現在その原因解明を行っている。さらに,リターン電流の磁場依存性と,CuO(電極)層の下部臨界磁場との相関関係も調べており,両者に強い相関があることを見出している。これまでに得られた成果は,21年度6月開催の国際会議(ISEC' 09)に3篇の報告を予定している。また,米国物理学会誌(JAP, APL誌)等に論文投稿のため,3編を執筆中である。
|