研究概要 |
本研究の目的は,超高サイクル疲労の原因である内部起点型破壊において,き裂の初期伝播過程で生じる微細な凹凸状破面の形成機構を明らかにすることである.「この特殊な破面は,気体成分の吸着が著しく少ない内部き裂の伝播過程において,圧縮負荷によりき裂新生面が長期間繰返し接触をすることで形成される」という仮説を提案し,その検証を試みる. 本年度は,平成18年度の研究で開発した試験機を用いて,大気および真空圧力の下でTi-6A1-4Vのき裂伝播特性試験を行った.真空圧力は2.0×10^<-5>Pa(高真空)と2.7×10^1Pa(中真空)の2種類を用いた.計測した項目は,da/dN-ΔK曲線,da/dN-ΔK_<eff>曲線,ΔK_<th>,き裂開閉口挙動である.また,き裂伝播試験後の破面を走査型電子顕微鏡によって観察し,「微細な凹凸状破面」の形態に及ぼす真空圧力の影響を調べた.得られた主な結果を以下に示す. (1)中真空,高真空ともに,大気中に比べてき裂伝播速度が低くなった.特に10MPa√m以下の低ΔK領域での差は10〜100倍以上に広がった.しかし,中真空と高真空におけるき裂伝播速度に大きな差は見られなかった. (2)da/dN-ΔK_<eff>曲線による整理の結果,真空と大気のき裂伝播速度の差は小さくなった.しかし,両者は完全には一致せず,この差はき裂閉口のみでは説明できないことが明らかとなった. (3)微細な凹凸状破面は,大気中では認められず,高真空,中真空でのみ観察された.この破面形態は真空圧力によって異なっており,高真空では数μmの大きさの凹凸からなるのに対し,中真空ではこの径が大きくなり,そのエッジがより明瞭に観察された.内部起点型破壊で形成される微細な凹凸模様は高真空中のそれに極めて類似していた.以上から,内部き裂周囲の環境は,中真空よりも高真空に近いことが類推された.
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