研究概要 |
本研究では,骨粗鬆症の患者ごとの全骨格に対する力学解析モデルを医療画像から作成して骨強度解析を実行し,患者ごとの解析結果をデータベースとして蓄積して,骨粗鬆症の診断と治療に有効活用できる方法の確立を目指している.平成18年度は,(1)患者別力学解析手法の開発,(2)骨粗鬆症患者の臨床データ収集と力学モデルの作成,(3)骨粗鬆症骨データベースの開発,(4)患者別筋骨格モデル作成法の開発に分けて研究を行った. (1)については,「メッシュマッチング」の技術を用いて,既存の骨の有限要素モデルを基に,これを患者のCT画像から得られた形状に変形して患者別の骨のモデルを効率よく作成する手法を開発した.これを骨粗鬆症脊椎の有限要素モデル作成に応用し,その有効性を確認した.脊椎突起などの形状の起伏が激しい部分において有限要素が潰れるなどの問題点に対しては,その解決法としてFDD(Free Domain Deformation)法の有効性を確認した.また,市販の人体有限要素モデルであるTHUMS(TTDC製)を導入し,これを基本モデルとして使用可能なように脊柱部分の修正を行った.(2)については,骨粗鬆症治療を継続中の患者数名に対し脊椎のCT画像データを取得し,これに対応する力学解析モデルを作成して応力解析を行った.投薬による骨粗鬆症の治療が,半数の患者に対しては強度的にも有効であることが確認された.(3)については,(2)の解析により得られた骨密度分布や応力分布の2次元画像を数値化しデータベース化する手法の開発を進めている.(4)については,汎用の筋骨格系力学シミュレーションソフトウェアAnybody Modeling System(Anybody Tech.社製)を用いて,脊椎周囲の筋肉を考慮した力学モデルを作成し,体幹の姿勢や背骨の互いの位置を変化させた時に,脊椎に作用する力にどのような影響が出るかを解析で求めた.
|