研究概要 |
エシェルビーの概念に基づいて、材料不均質性の強さを表わす形態力(不均質力)を導出し、数値解析手法の構築と多結晶体の変形挙動、特に多結晶体の損傷の起点とばらつき因子の解明、表面粗面化現象の定量的評価と理解、ならびに箔材料の力学特性の推定と繰返し熱負荷への適用を試みた。得られた主な成果は以下のとおりである。 (1)多結晶体では、巨視的には一様な変形であっても微視的には個々の結晶で非一様な変形が進行する。特に巨視的に弾性変形であっても、微視的には交番塑性変形していることが示唆される。このような不均質性は、隣接する結晶との結晶系の不整合に起因すると考えてよい。 (2)多結晶体を単調に引張ったときに、表面には凹凸が発達する。この凹凸(表面粗面化)は、与えたひずみにほぼ比例し、結晶粒径の10〜25倍の大きなうねりを持つことが知られているが、これは多結晶をモデリングすることで定量的に評価することが可能である。さらにこの粗面化は、結晶の配置によって定められているため、材料の塑性変形特性にはほとんど無関係であり、結晶系の幾何学的ばらつきが発現したものである。 (3)箔材料の変形特性は、バルク材のそれに比べて流動応力(変形抵抗)が大きく延性が著しく小さい。箔材料の引張試験は困難を伴うが、それに代わり硬さ試験を用いることによって機械的特性の推定が可能である。繰返し熱負荷によって組織変化とともに残留応力が生じるため,機械的特性が変化する。
|