研究概要 |
高リサイクル性を持つ絶縁皮膜層を有する軟磁性粉末冶金合金について,樹脂を添加したBA材,樹脂の添加を行わず,成形圧によって密度を変えた素材について,平面曲げ疲労試験を行い,表面微小き裂の発生および進展挙動を検討し,以下のことを明らかにした. (1)疲労強度は樹脂添加なしの高密度材ほど高くなっており,密着性の向上を目的とした樹脂添加は逆に強度低下を招くことが明らかとなった.したがって,樹脂を添加しないこと,密度を向上させることが疲労強度特性改善に有効である. (2)き裂の起点は粉末粒界と表面の空孔が混在していた.高密度になるほど空孔からき裂が発生する割合は減少し,空孔率の減少によって,空孔が疲労強度特性におよぼす影響は小さくなる. (3)疲労強度特性に優れた軟磁性粉末冶金合金の開発には,高密度化を行い,空孔率を減少させることが有効であるが,高密度な材料においては,き裂が粉末粒界から生じるため,同時に界面強度の向上が求められる. 結晶粒径が300〜500ナノメートルの超微細結晶粒P/Mアルミニウム合金の,中高温域での疲労強度特性についての検討を行った.塑性予加工を与えない材料では,き裂発生機構への温度依存性は認められず,粉末粒界面でき裂発生が生じていた.また,温度による疲労強度の低下は従来材に比べて小さいことが明かになった.また,き裂進展速度は高温環境下で高速となるが,その程度は従来材に比べて小さい.本材は温度上昇によるヤング率の低下が抑えられておりこのため進展抵抗の低下も抑制されたものと思われる.一方,塑性予加工材においては引張強度が205℃で約半分に低下するのに対して,疲労強度は2割程度しか低下せず,高温環境下での疲労特性が優れていることが明らかとなった.しかしながら,塑性予加工材では介在物起点とした破壊が多く見られ,温度上昇により介在物と母相の界面接着強度が低下したものと考えられる.。
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