研究概要 |
ナノからマクロに至る材料の各種階層の組織形成と応答をシームレスに結合するモデルを構築するための基礎的な研究として得られた成果を以下に示す. (1)転位と析出物の相互作用について,原子間ポテンシャルが明らかでない場合に,第一原理バンド計算コードVASPを用いてLJポテンシャルにフィッティングし,分子動力学シミュレーションを行う一連のプロセスを提案した.さらに,分子動力学シミュレーションで得られた転位と析出物の相互作用を,ローカルルールとして離散転位動力学シミュレーションに組み込むことでスケールアップする手法を構築した. (2)場の理論に基づき微分幾何学的相互作用場を定義・定式化し,複数階層における不均質変形場の相関を陽に取り扱える理論的枠組みを構築した、さらに,同枠組みを,3種の転位下部組織と表面性状への影響に関する問題に適用し,下位のスケールでのゆらぎ(不適合度場に基づいて記述)が上位スケールのそれに及ぼす影響に関する具体例を示すとともに,3スケールを考えた場合の系全体の応答に対する安定性・不安定性評価法の提案を行った. (3)均質化法および結晶塑性論とPhase Field法をシームレスに結合するモデルを構築し,冷間加工後の静的一次再結晶時に形成される再結晶組織Fe-C合金のγ→α相変態により形成された組織を有する材料の強度評価をシミュレートし,その妥当性を確認した.また,Multi Phase Field法による動的再結晶過程のミクロ組織に依存するマクロな力学特性評価を可能とするマルチスケールモデルを構築した。 (4)単結晶の夫々のすべり面における転位分布を,結晶塑性理論におけるすべり面におけるせん断応力の変化率とすべり速度関係を律則する構成式に反映させて得られた単結晶モデルを,適切な結晶粒数結晶形態を設定した代表体積要素モデルの個々の結晶粒に適用し,それに均質化理論を用いて,多結晶体の応答評価にスケールアップする手法を構築した.
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