研究概要 |
水素は近未来エネルギーとして利用の実証試験段階にあるが,金属疲労や摩擦・摩耗に及ぼす水素の影響は未だ明らかでない.本研究では,水素利用機器の長期信頼性確保の観点から極めて重要である,水素利用機器の構成材料が高圧水素ガスに長期に曝され大量の水素が侵入した状態を模擬したフレッティング疲労強度評価を行った. 本研究の初期に開発した1MPa水素ガス中フレッティング疲労試験装置を用いて,試験を実施した.試験片には高圧水素ガス(760気圧,105℃,100時間)暴露による水素チャージを行った.この水素チャージ条件の試験片表面水素濃度は約60ppmまで増加した.なお,水素未チャージ材の水素濃度は1.7ppmである. フレッティング疲労強度に及ぼす材料内水素の影響に着目して行った水素チャージ材の大気中試験では,水素チャージ材の疲労強度低下がみられ,機器の強度設計では配慮が必要であることが明らかになった.次に水素濃度の影響を検討するために,高圧水素ガス暴露の暴露時間を300hとした試験片も作製した.300h高圧水素ガスチャージ材の疲労強度は,100hチャージ材よりさらに低下し,多量に水素を含む材料の強度低下はより顕著となることが明らかとなった.環境水素の疲労強度に及ぼす影響を検討するため,水素未チャージ材の水素ガス中試験を実施した.水素ガス中では初期に材料中に水素が含まれていない状態であっても疲労強度が低下した.環境と材料内の水素の影響を重畳させた条件で生じる疲労強度について検討するために,100hチャージ材の水素ガス中試験を実施した.その結果,大気中で実施した100hチャージ材の疲労強度に比べて,水素ガス中ではさらに低い疲労強度となり,多量に水素侵入したフレッティング疲労強度低下傾向が把握できた.300hチャージ材については,今後さらに試験を自主的に行う予定である.
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