研究概要 |
本研究では,これまでに組織再生技術が実用化されている皮膚などに比べて代謝速度の速い組織を再生のための担体の造形技術と細胞の培養技術の確立を目指す. 高代謝速度の組織を再生には担体内に細かく分岐した流路ネットワークを配置する必要があり,このような担体の製作に粉末焼結積層造形法を利用した.本方法は材料選択の自由度が高い一方,微細性が低いという問題点があった.本年度は焼結用のレーザのスポット径を市販造形装置の1/5に絞ることができる造形装置を開発した.また,本研究では担体の材料となるポリカプロラクトンに水溶性のフィラを混合して造形することによって担体の空孔率を高めているが,フィラの特性,例えば材質,粒径,混合率と,空孔率,空孔の大きさ,造形分解能などの関係が明らかになっていなかったが,これらの関係について実験的な検証をおこない,要求される担体の性能を実現できるようになった.また,樹脂およびフィラの熱伝導特性と,光の透過特性が微細性に与える影響を評価した. 上記のように作成された10cm^3の担体を用いて,肝ガン細胞株Hep G2を用いて10日間の灌流培養による臓器育成を行った.まず流路有無の影響を調べたところ,流路無しではほぼ全増殖が起こらなかったが、流路を配備することで3倍の増殖を達成した。さらに,ポリカプロラクトンの低細胞付着性を改善するため,細胞側をビオチンで、担体内部表面をアビジンで修飾し、両者の高親和力を利用して、初期細胞付着性の改善を試みた.アビジン・ビオチン反応と流路有り担体とを用いることで,10日間の灌流灌流培養にて,コントロールに比べて,6倍の増殖を得ることができた。更なる改善を目指し,ナノカプセル化ヘモグロビン添加の可能性検討のため、ラット肝細胞での毒性と効果とを小スケール培養にて調べたところ毒性はなく,酸素供給不足部分への酸素供給を大幅に改善しえる可能性を示すことができた.
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