研究概要 |
表面に微細構造を設けることで乾湿によらず安定した摩擦を得ることが考えられ,浴室での転倒事故を防ぐための床や,快適な福祉機器ハンドルなどの実現が期待できる.本研究では,乾湿環境下での安定した摩擦を得るためのゲル材料あるいは床表面の設計・製造技術の確立を目的に,下記の研究を進めた. (1)設計論の検討(水/油を介在させた場合) 昨年実施した実験では介在物を水だけとしたが,今年度は油を介在させた場合の実験も行い,これらの結果に基づく設計論を検討した.ラインアンドスペース状の凹凸構造を種々変えながら水/油の排出性を高め,摩擦特性を改善できることがわかったが,水と油では適切な条件が異なることがわかった.介在物の排出性を高めることの有効性は容易に推察できるが,油の場合は凹凸構造エッジ部のスクレーパ的な効果が有効であることがわかった. (2)複周期構造の検討 摩擦・付着力で興味深い特性を持つヤモリの指は,長い周期構造に短い周期構造が重畳した形になっており,機能的合理性があるとみられる.これを模擬し,一様なラインアンドスペース構造ではなく,長い周期の構造上に周期の短い構造を重畳させた構造で更なる性能の向上が試みた. (3)ナノ構造製作と転写特性の評価 上記の短周期構造製作のため,直径300nmのシリカ微粒子を自己整列させ,これをマスクとしたナノ構造を型とした転写特性の評価を行った.基礎実験として,PMMAへの形状転写が行えることを確認した. 以上,摩擦特性改善の方向性は明らかとなったが,複周期構造の設計指針に関する検討と福祉関連機器への適用を引き続き検討する必要がある.
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