研究概要 |
固体表面に微細構造を設けることで乾湿によらず安定した摩擦を得ることが考えられ,昨年までは浴室等での転倒事故を防ぐための床の設計を検討してきた.今年度は,福祉機器ハンドルや手すりなどへの適用を想定し,滑りにくく,かつ感触のよい表面微細構造の設計・製造技術の確立を目的として,下記の研究を進めた. (1)ハンドルを想定した摩擦実験 足裏での摩擦とは異なり,手すりやハンドルの把持に際しては面圧をかけた後の往復摺動が多いため,摩擦試験機のプログラムをそのように修正した.また,従来行ってきた溝状の微細構造は方向性が強いため,今年度は円柱が並んだ微細構造に変え,これとシリコーンコムの間の摩擦を測定した,その結果,ピッチ300-500ミクロン,高さ100ミクロン程度の構造が摩擦を大きくする点からは有効であることわかった. (2)官能試験との対応 摩擦を大きくできても痛みを感じるようでは好ましくないため,官能試験を行った.その結果,受容器間隔(0.5-1mm)よりも小さい300ミクロンピッチの場合に,痛みが小さく,かつ滑りにくいことがわかり,人に触れる機器類の摩擦を適切に設計するための重要な知見が得られた.
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