研究概要 |
窒素ガス潤滑よる窒化炭素(CNx)膜の超低摩擦の発現機構はいまだ未解明であるが,これまでに申請者らは,しゅう動条件,窒素の雰囲気圧力など稼動条件の制御により超低摩擦と極限的耐摩耗を積極的に発現し得る可能性を実験的に明らかにしている. 1年目の本年は,安定した低摩擦システム確立のスタートとなる「CNx膜が成膜された直後から摩擦前までの表面への吸着物質」が窒素ガス潤滑よるCNx膜と窒化ケイ素の摩擦に及ぼす影響を明らかにし,安定した0.03以下の摩擦係数を発現するための環境設計に対する指針を得た.具体的な結果を以下に示す. (1)窒素ガス中におけるCNx膜と窒化ケイ素の摩擦係数は,CNx膜成膜直後に触れる曝露ガス(窒素,酸素,乾燥空気,大気)及びその後の保管ガス(窒素,酸素,乾燥空気,大気)により0.003から0.6まで大きく変化する. (2)CNx膜を成膜後,100秒間酸素ガスを導入し,その後湿度40-60%RHの大気に30分間保管することにより,本研究における最小の摩擦係数0.003が得られた. (3)窒素ガス中におけるCNx膜と窒化ケイ素の摩擦係数は,CNx膜成膜直後の曝露ガスの種類により大きく変化する.大気中で30分間保管する条件下では,成膜直後の曝露ガスにより0.003から0.123まで変化する. (4)窒素ガス中におけるCNx膜と窒化ケイ素の摩擦係数は,保管環境により大きく変化する.成膜直後に窒素ガスを触れさせた場合,その後の保管環境により0.02から0.6まで変化する. (5)窒素ガス中におけるCNx膜と窒化ケイ素の摩擦係数は,CNx膜に曝すガスの順序によっても大きく変化する.酸素ガス,大気の順に曝した場合には0.003の非常に低い摩擦係数を得ることが出来るが,大気,酸素ガスの順に曝した場合には100倍の0.307となる.
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