研究概要 |
本年度は,マイクロバブルを用いた浮上分離による水処理技術と関連して,気泡塔内上部で観測されるような泡沫中を移動する微粒子に関して,泡沫の硬さや湿り度が微粒子の挙動に与える影響について詳細な実験を行った.そして,環境有害因子となる汚水中の微粒子に対して,より効率よく浮上分離が行なえるための条件について調べた.実験には,界面活性剤として硬い泡沫になるカセインと,柔らかい泡沫になるサポニンを使用し,縦置きにされた薄型の流路において,側面よりレーザーシートを照射することにより泡沫中を移動する微粒子の軌跡を追跡した.そして,泡沫の硬い-柔らかい,湿潤-乾燥などの特性の違いが,微粒子の沈降に与える影響について詳細に調べた.その結果,泡沫の間を通る流路の分岐部の節点における微粒子の挙動に関しては,柔らかいサポニン泡沫では微粒子は節点にとどまりづらく通過するのに対し,硬いカセイン泡沫では節点における微粒子の停留時間が長くなることがわかった.一方,泡沫の境界であるプラトーボーダーを移動する時間は,柔らかいサポニンで遅くなるため,節点でとどまる時間とプラトーボーダーを通過する時間の割合で,微粒子除去の効率が変わってくることがわかった.以上を総合して考えると,サポニンを含んだ泡沫で代表される柔らかく乾燥した泡沫において,微粒子除去は効率よく行なえることが,泡沫内における微粒子の詳細な挙動解析により示された.
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