研究概要 |
平成20年度(最終年度)は,粗面乱流境界層の粗面壁近傍場における平均速度および乱流量の詳細な計測をLDV(レーザードップラー流速計)を用いて行い,本研究課題である壁面抵抗と普遍法則成立の鍵となる壁面抵抗の作用点位置に対する粗さの効果および流れ構造との関係について考察した. 流れ方向レイノルズ方程式に基づいて壁面抵抗に関するモーメント式を導出し,壁面抵抗の作用点位置d_m,が摩擦速度で無次元化された平均流運動量流束,レイノルズせん断応力および粘性応力の粗さ要素間溝内領域の積分値で与えられることを示した.LDVで計測された平均流運動量流束,レイノルズせん断応力および粘性応力値から評価された壁面抵抗の作用点位置d_mは,d_m/k≒0.34となった.各積分値のd_m/kに対する寄与はそれぞれ30%,67%および3%であり,レイノルズせん断応力の積分値がd_mに対して主要な寄与をなす,なお,LDVの測定値から評価されたd_m値は壁面抵抗の実測により評価された値に対して約20%小さい,これは,粗さ要素問溝部内の底・側面近傍で速度計測ができなかったためである. さらに,粗面近傍場の流れ場をモデル化して解析的に流れ方向平均速度分布を与えることを試みた.その際,圧力抵抗ならびにレイノルズせん断応力を粗さ要素後端から生じるはく離せん断層の速度・長さ尺度と平均速度勾配でモデル化した.平均速度分布の解析解は,溝部底面近傍を除いて実験結果と良好に一致する.この解析解を利用して評価された壁面抵抗の作用点位置d_mは,粗さ密度(粗さ要素1ピッチ長さに対する溝部幅の比)の増加に伴い増加し,実測値の粗さ密度に対する変化を良好に表現した,しかし.解析解による値は実測値に対して約30%低くなった.
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