(1)「嚥下・咀嚼運動のモデリング」、(2)「固形食品の圧縮・破断特性のモデリング」、(3)「食塊の嚥下・咀嚼連成解析」、について研究を実施した。 (1)「嚥下・咀嚼運動のモデリング」CT画像を基にして、口腔から食道及び気道にいたる3D有限要素モデルを作成した。嚥下運動の時間的変化はX線造影検査結果から定義した。石膏歯形模型から作成した口腔詳細モデルに対し、その咀嚼運動をMiocheらの測定結果から定義した。 (2)「固形食品の圧縮・破断特性のモデリング」歯を模擬したプランジャーによる圧縮試験を豆腐、バナナ、チーズ、クッキー、クッキーサンド及び団子の圧縮・破断変形について行った。測定結果に対して線形弾塑性モデルを適用すると共に、破断をシミュレートするため豆腐に対してはALEモデル、その他の食品に対してはTie-breakモデルを適用した。シミュレーション結果は測定結果と比較的良く一致し、食品の咀嚼シミュレーションの可能性を示す意義ある結果が得られた。 (3)「食塊の嚥下・咀嚼連成解析」液状及びゼリー状食塊の嚥下連成解析と固形食品の咀嚼連成解析を行った。液状食品は低粘度になるほど喉頭付近の食塊のばらつきが顕著であり、咽頭部の流速も早くなる。喉頭蓋の応答の遅れによる誤嚥の再現など、現実の症例に対応した連成解析を実現できることができた。ゼリーは硬軟2種類のゼリーに対し連成解析を行った。硬いゼリーの嚥下は、咽頭を通過するときの滑らかさを欠き、喉頭の挙上に伴い一時的にゼリーの動きが停止する。これらの結果はX線造影検査結果と一致し、連成解析の有効性が検証できた。
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