1.本研究の前身において開発された近赤外光多重反射周波数分光法の装置は、圧縮着火の低温酸化反応での重要化学種でありながら蛍光法では検出できないHO_2ラジカルの1.4〜1.5μmの吸収帯での観測を可能にし、さらにOHラジカルも対象となった。さらに当該反応過程の解明を進めるには、アルキルラジカル、アルキル過酸化ラジカル等の紫外吸収帯を有する化学種の検出が必要となった。これらの検出法として従来の重水素ランプ高原による紫外吸収法では感度不十分のため、紫外パルスレーザを多重反射させる装置を開発した。パルスレーザに対応した光学系としては多重反射区間で常にビーム波面曲率と凹面鏡曲率を一致させて鏡面上で集光させない配慮が必要となった。本方法によって308nmでのOHラジカルの検出感度が10^<12>molecule/cm^3程度となり、従来法より一桁改善されることが確認された。 2.定常運転されているピストンエンジン内の酸化反応過程を追う手段として、高速パルスサンプリング手法を適用した。本手法は当研究グループによってその能力を高めた独自の仕様である、差動排気系と質量分析を用いた、サンプルガスの蓄積を行わない直接検出手法である。H20年度としては本手法をPRF(ノルマルヘプタン・イソオクタン混合燃料)に適用するための条件設定の後、種々の計測を行った。ノルマルヘプタンは親分子質量の100で検出されるが、イソオクタンはフラグメントの99で選択的に検出される。中間生成物して市はホルムアルデヒドと過酸化水素が対象となり、過酸化水素はその質量数34に18の同位体に由来する酸素分子の信号が重畳するため、その影響を差し引く処理手順を確立した。燃料混合比率、すなわちオクタン価依存としてそれが高くなるほど、低温酸化段階での燃料消費と中間生成物量の減少が確認され、着火性の低下・低温発熱量減少と対応している。
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