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2008 年度 実績報告書

生体組織の凍結損傷に及ぼす細胞レベルの熱物質移動の影響

研究課題

研究課題/領域番号 18360104
研究機関九州大学

研究代表者

高松 洋  九州大学, 大学院・工学研究院, 教授 (20179550)

キーワード低温生物学 / 凍結保存 / 冷凍 / 細胞・組織 / 凍結損傷 / 三次元観察 / 生存率 / 浸透圧
研究概要

生体組織や臓器および人工臓器の凍結保存実現のためには,組織を構成する細胞の凍結損傷機序の解明が重要である.従来から凍結に関する多くの研究は単離した細胞の懸濁液を用いて行われてきたが,単離した細胞と単層培養したシート状の細胞では凍結に対する耐性が異なるという報告もある.そこで,本研究では細胞の培養状態と形態の違いが細胞損傷に与える影響を明らかにすることを主な目的としている.本年度は,ヒト前立腺癌細胞PC-3を単離してNaCl水溶液中に懸濁浮遊した状態の細胞,およびコラーゲンコートしたガラス面上に培養して付着伸展した細胞とそれが密になって細胞間接着を有するコンフルーエント状態になったものの3つを試料として凍結解凍実験を行い,以下の結果を得た.なお,実験条件は,最低到達温度-10℃,冷却速度5または50K/min,加熱速度50K/minである.
1)冷却速度によらず単離細胞と付着細胞の凍結解凍後の生存率には優位差は認められない.また,冷却速度が50K/minのほうが5K/minの場合より生存率が低くなる.
2)コンフルーエント状態の細胞の生存率には冷却速度の依存性が認められない.また,コンフルーエントの細胞は単離細胞と付着細胞より生存率が有意に高く,特に50K/minの場合にその差が顕著である.
3)50K/minの場合には,単離細胞と付着細胞では約40%に細胞内凍結が生じ,そのすべてが損傷するのに対し,コンフルーエントでは約90%で細胞内凍結が生じるが,その大部分が生存する.
以上の結果,および昨年度までの結果を合わせると以下の結論を得る.
1)単離した細胞と孤立した培養細胞では脱水収縮特性にほとんど差がなく,凍結解凍後の生存率もほぼ等しい.
2)しかし,細胞間接着を有する場合には,細胞内凍結が生じやすくなるにもかかわらず生存率が有意に高くなる.したがって,致命的でない細胞内凍結は,細胞の凍結損傷を抑制する効果がある.

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2009 2008

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] 3-D measurement of osmotic dehydration of isolated and adhered PC-3 cells2009

    • 著者名/発表者名
      T. Yoshimori, H. Takamatsu
    • 雑誌名

      Cryobiology 58

      ページ: 52-61

    • 査読あり
  • [学会発表] 高濃度塩化ナトリウムおよび糖類水溶液による細胞の浸透脱水損傷2009

    • 著者名/発表者名
      吉村拓朗, 高松洋
    • 学会等名
      日本機械学会九州支部第62期総会講演会
    • 発表場所
      福岡.
    • 年月日
      2009-03-18
  • [学会発表] Do cells adhered on a surface differ from isolated cells in supercooling of intracellular solution during freezing?2008

    • 著者名/発表者名
      H. Takamatsu, T. Yoshimori
    • 学会等名
      第35回日本低温医学会総会
    • 発表場所
      東京.
    • 年月日
      2008-11-30
  • [学会発表] Osmotic Response and Injury of Cells in Hypertonic NaCl Solutions ; Real-Time 3-D Measurement of Volume Change of Cells2008

    • 著者名/発表者名
      T. Yoshimori, H. Takamatsu
    • 学会等名
      7th JSME-KSME Thermal and Fluids Engineering Conf.
    • 発表場所
      札幌.
    • 年月日
      2008-10-16
  • [学会発表] 3-D measurement of osmotic dehydration behavior of PC-3 cells : suspension vs. adhered cells2008

    • 著者名/発表者名
      T. Yoshimori, H. Takamatsu
    • 学会等名
      CRYO 2008, 45th Meeting of the Society for Cryobiology
    • 発表場所
      Charlotte, U.S.A.
    • 年月日
      2008-07-23
  • [学会発表] Effect of cell-to-surface interaction on freeze tolerance and osmotic response of cells2008

    • 著者名/発表者名
      T. Yoshimori, M. Fukagawa, H. Takamatsu
    • 学会等名
      ASME 2008 Summer Bioengineering Conference
    • 発表場所
      Marco Island, U.S.A.
    • 年月日
      2008-06-25
  • [学会発表] 細胞膜の水透過率と細胞の収縮特性-浮遊細胞と培養接着細胞の比較-2008

    • 著者名/発表者名
      吉森崇志, 高松洋
    • 学会等名
      第45回日本伝熱シンポジウム
    • 発表場所
      つくば
    • 年月日
      2008-05-21

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公開日: 2010-06-11   更新日: 2016-04-21  

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