研究概要 |
本年度は,クラスタ制御・波動制御およびスマートストラクチャの観点から無振動状態生成および無音領域生成に関する研究を重点的に行った.主な成果をまとめると以下のようになる. (1)波動制御およびActive boundary contro1の観点から,3次元直方閉空間内における無音領域生成手法を提案した.構造振動の場合は支配方程式が4回の偏微分方程式となるので,振動現象を支配する状態量は4種類(変位,傾斜角,曲げモーメント,せん断力)となるが,閉空間内における騒音現象の支配因子は,支配方程式が2階の辺便方程式であるので,2種類(音圧,粒子速度)となる.したがって,対象領域にある境界での1つの状態量を抑制することで無音状態が生成される. (2)スマートストラクチャを指向し,スマートセンサ・アクチュエータによる分布定数系構造物の最適多モード制御法を提案した.従来のDVFB法は,非常に簡素な構成であるものの,フィードバックゲインによって抑制効果の高い周波数帯域が異なるという欠点を有する.一方,波動制御法は無限個の振動モードを同時に不活性化できる反面,制御則がラプラス変数の非有理関数によって記述されるため,その実現は非常に難しい.この問題を解決すべく,各モードに与える減衰が等しくなるようにスマートセンサ・アクチュエータの形状関数を構成し,これを基調としたDVFB法を提案した.さらに,数値解析および実験の観点から当該手法の有用性を明らかにした. (3)振動現象から騒音現象への遷移過程は非常に複雑であり,構造振動を抑制したとしても騒音抑制につながらない,さらには騒音が増大してしまう危険性がある.これを解決するために提案されたのが音響パワーモードの概念であるが,当該因子を抑制しすることで騒音抑制を図った場合,構造振動が増大する可能性は否定できない.そこで,両者の抑制を可能とする構造音響モードの概念を提案し,その抑制手法の有用性を数値解析の立場から明らかにした.
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