研究概要 |
本研究では,バーチャルリアリティの分野で多く用いられている力覚提示(ハプティックディスプレイ)の技術を,非接触浮上などのアクチュエーション技術と実世界において統合的に用いることで,製品組立工程や研究開発環境における微小/精密部品のハンドリングを支援するツールを実現することを目的として実施した. ツールへの付着が問題となる微細なパーツや,表面の高いクリーン度を要求されるパーツ(シリコンウェハ,液晶用ガラス基板,ハードディスク用基板など)においては,磁気浮上機構や静電浮上機構などの非接触浮上機構により,パーツを非接触でハンドリングすることが有効であると考えられる.しかし,磁気・静電浮上機構は,本質的に不安定な力を制御により安定化しているシステムであるため,機構を手で動かすなどした場合に,システムの安定性が損なわれ非接触状態が維持できない場合がある.そこで,本研究で提案研究するシステムでは,磁気・静電浮上機構と力覚提示装置を組み合わせ,浮上機構の内部状態に応じて力覚提示機構が機構を動かす操作者に対して適切な力フィードバックをかける.これにより,操作者は,非接触浮上状態を維持ししたままシステム(=ハンドリングツール)を自由に動かして,物体の非接触ハンドリングを行うことができる. 本年度の研究においては,ミリメートルオーダの磁性物体に対する1自由度の磁気浮上ハンドリングシステム,ハードディスク用アルミ基板に対する1自由度の静電浮上ハンドリグシステムを,それぞれ上記のコンセプトに基づき実現した.また,これらの実現に際し,浮上制御系に存在する積分器が,直感的な物体プレーシングを実現するための重要な役割を果たしていることを明らかとした.
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