電子材料、セラミックス、プリンタ、医薬品、化粧品などの分野において、大きさや形状、純度、物理的・化学的性質などが高度に制御されたマイクロ粒子に対する要請が高い。また、液滴や軟体もマイクロ粒子とみなせば、その利用範囲は化学や生命科学にまで拡がる。本研究はこのようなマイクロ粒子を、静電力によって搬送、分別、分離、混合など自在に操作する技術を開発することを目的とした。粉体をハンドリングするには機械的な方法をはじめとしてさまざまな方法があるが、静電気を利用する方法は、機器に大きな振動が発生しない、粒子に大きな熱や力が加わらない、可動部がないため潤滑油などの不純物が混入するおそれがない、微少量あるいは粒子一つ一つの操作が可能であるなどの利点があり、上述のような高度材料のハンドリング技術として適している。このような静電力を利用するマイクロ粒子のマニピュレーション技術として、本研究では以下のことを明らかにした。(1)電界中における粒子群のダイナミクス解析:帯電や衝突を繰り返しながら、粒子群が電界中でさまざまな機械的・電気的力を受けて運動する詳細なメカニズムを、解析・シミュレーションと実験の両面から解明した。粒子群全体を連続体として扱うのではなく、ミクロな視点から粒子一つ一つの運動を追跡することによって全体の挙動を明らかにした。(2)進行波電界による粒子の搬送:上記の応用として、進行波電界によって粒子群を搬送、分散、集中、混合する技術を開発した。固体粒子だけでなく、液滴や軟体も対象とした。(3)進行波電界による粒子の分別:粒径の異なる粒子が混在する粒子群から、進行波電界によって特定の粒子を分離・分別する技術を開発した。(4)静電ピンセットによる単体粒子のマニピュレーション:マイクロ電極によって単体のマイクロ粒子を把持し、さらに移動、分離する技術を開発した。
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