研究概要 |
前年度までに構築したTHz光によるイメージング装置による反射・透過同時計測技術をベースとして, 本年度は電気絶縁材料の絶縁劣化現象とTHz光吸収・反射特性の評価実験を進めた. その際, プリント配線板における長期的な電気化学的絶縁劣化現象であるイオンマイグレーションを対象として, THz帯の電磁波により, 可視光では検出が困難な基板内部を伸展するデンドライトのイメージング技術を研究開発した. 一方, 海底用電力ケーブルの電気的絶縁劣化現象である水トリーの進行度をケーブル表面からのTHz光の反射・透過特性を調べることで検知可能かどうか応用研究を進めた. THz波によるイメージングの妥当性を検証・評価するために必要な参照データには軟X線顕微鏡によるX線吸収画像を利用した. 構築したTHzイメージング技術を用いて非破壊的にイオンマイグレーション現象を検出するための条件を調べ, 本技術で検知可能な銅の析出量を調査した結果, デンドライトが発生した10個のサンプル全てがTHzイメージングによりデンドライトの存在を検知できることを実証した. 同時に, THz透過画像が軟X線により定量した銅密度分布画像に近いことがわかり, THz透過画像によりイオンマイグレーション現象を検出できる可能性が明らかにした. この結果は被爆の危険により使用が制限されるX線に代わり, 生体に無害なTHz波をイオンマイグレーションの検出に利用できる可能性を示唆している. しかしながら, 空間分解能はX線に比べて劣るため, 更なる技術開発が必要と考えている. 一方, 銅密度分布画像から, アノードに近いデンドライト先端部に, より多くの銅金属が蓄積している様子を確認した. テラヘルツ透過画像と銅密度分布画像を比較することで, 本テラヘルツイメージングで検出可能な銅の最小密度が, 約17.8μg/mm^2であることを明らかにした.
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