研究概要 |
本研究は水中に含まれるダイオキシン等の難分解物質の完全除去を実現するため,気体・液体・プラズマの3相からなる反応空間を形成し,効率良いOHラジカル生成と反応とを同時実現することを目的として進められた。これまでの研究例とは異なり,本研究では3相を分離制御しながらそれらの共存空間を形成することで,OHラジカルの高効率生成と反応場を実現した。 反応場の構成としては,数mmの気液界面にマイクロプラズマを発生基点としたパルスプラズマチャネルを生成する方式と,気体と液体が混合状態で流動する気液二相流内の気液界面に沿ってパルス誘電体プラズマチャネルを発生する方式とを開発した。前者においては処理液導電率と供給ガスのプラズマ特性によって約150nsのプラズマ持続期間内にチャネル構造の大幅な変化とそれに伴うラジカル生成時刻が異なることを見出し,各相における反応過程の分離を行った。さらに,処理液の粘性に左右されず安定に複数のプラズマを同時に形成して,難分解物質として用いた酢酸を高速に完全分解できることを実証した。また後者においては,約100nsのプラズマ形成時間内に2相流の気泡内においてプラズマは主に気泡中心から発生し次第に気液界面に集中することを明らかにし,気液プラズマ界面へのプラズマ集中といった特異な反応場が形成されていることを確認した。さらにこの現象は液体の静電容量を含めた電気回路的考察でその挙動が説明可能であることを示し,ネオンガスを用いた場合は極めて高い分解効率が得られることを定量的に示した。一方で難分解物質分解の反応主体であるOHラジカルについては,レーザ誘起蛍光法による時間,空間分解計測により,ラジカル寿命やラジカル密度の評価を可能として,繰り返しパルスプラズマ生成条件と効率良いOHラジカル反応場の形成要因とを明らかにした。
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