研究概要 |
本研究では,高温超電導ケーブルの高信頼度かつ合理的・実用的な電気絶縁設計に資する絶縁データを取得・体系化することを目的としている.本年度は,クエンチ環境を想定した熱/電界複合ストレス下における絶縁特性について検討を行った.高温超電導ケーブルの通電・絶縁環境を模擬した液体窒素/積層テープ複合絶縁系により,大気圧液体窒素(77K,0.1MPa)中および減圧過冷却液体窒素(65K〜67K,124hPa〜234hPa)中におけるクエンチ環境下の部分放電(PD)特性を取得した.その結果,以下の知見が得られた. (1)Bi2223超電導テープを銅テープとともに巻枠上に巻回したケーブルモデルにおいて,超電導テープに臨界電流(Ic)以上の過電流を通電してクエンチを発生させ,液体窒素/積層テープ複合絶縁系に熱/電界複合ストレスを与えた.その結果,クエンチを発生させない定常的(静的)なPD開始電圧以下の電界ストレス下においても,クエンチによる過渡的(動的)な熱ストレスの重畳によってPDが発生することを示した. (2)過冷却液体窒素中におけるPD開始電圧はI/Ic=1.8付近において減少し始め,熱/電界複合ストレスの増加に伴って最大で約1/14まで減少した.大気圧液体窒素中においては,PD開始電圧の減少傾向が見られる電流域に差異はあるが,I/Ic=3付近において動的なPD開始電圧が静的なPD開始電圧の約1/3まで低下する共通の傾向が得られた. (3)PD開始後のPD信号が印加電圧位相のゼロクロス付近にシフトしていることから,PD形態はボイド型であると考えられる.また,PD信号が継続的に発生した後に消滅したことから,超伝導テープのクエンチによる熱ストレスが積層テープ間の液体窒素に伝搬して気泡(ボイド)を発生させてPDを誘発し,その気泡が液体窒素によって冷却・縮小してPDが消滅したと考えられる.
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