共蒸着法を利用して有機アロイ膜の作成を行った。本研究では有機EL素子に利用される正孔輸送材料と正孔阻止材料について検討を行った。正孔輸送材料では、トリフェニルジアミン誘導体(TPD)とナフチル基置換ジアミン誘導体(NPD)を利用して、有機アロイ膜を作成し、それぞれの単独膜に比べて、多結晶化の進行を強く抑制できることを明らかにした。正孔阻止材料では、バソクプロイン(BCP)をベースに、正孔輸送材料であるNPD、電子輸送材料であるオキサジアゾール誘導体(PBD)、同じ正孔阻止材料であるBCPの無置換体(Bphen)、電子注入材料であるリチウムキノリノール(Liq)を用いて有機アロイ化した。BCPは数時間で完全に多結晶化してしまう不安定な膜質な材料であるが、アロイ化により安定な膜質が実現できた。ただし、Liqを利用した有機アロイ膜は分子サイズとしての相性が適切でないため、アロイ化は成功しなかった。発光層としてアルミキノリノール錯体を利用した有機EL素子を作成し、それぞれの単独材料を利用した素子と比較して、ほとんど影響を受けないことを明らかにした。しかしながら、正孔阻止材料では有機アロイ化の際に電子的な性質は同質な材料を利用した場合(PBDやBCP)には、良好な特性が得られたが、正孔輸送材料のNPDを利用した場合には、正孔阻止性能が著しく低下したために、膜質の安定化が実現できても正孔阻止層としては利用できないことがわかった。コプラナー型タイムオブフライト(TOF)の測定装置を構築した。SN比が非常に悪かったので、十分な薄膜性能の評価が可能ではなかったが、キャリア移動度の測定は実現できた。今後、さらに最適化を行う必要がある。通常のTOF測定においても、不安定なBCPの電子移動度の測定が大気雰囲気下でも実現できたことにより、有機アロイ法の膜質改善が有効であることを明らかにした。
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