研究概要 |
当該年度は、有機・無機ハイブリッドの新機能性を明らかにすることに先立ち、高い電荷輸送性や高い蛍光量子収率を有するregioregular poly-(3-hexylthiophene)(P3HT)、poly(9,9dioctylfluorene)(F8)、poly(2,5-bis(3-alkylthiophen-2-yl)thieno[2,3-b]thiophene)(pBTCT)およびこれらのコポリマ[例えばpoly(9,9-dioctylfluorene-co-bithiophene)(F8T2)】などの電子物性、光物性を明らかにした。特に、F8の構造(α相、β相、結晶相を選択的に発現させることを可能にした)により、蛍光量子効率、発光波長、電荷移動度、増幅された自然放出光の測定から求めたゲイン係数が大きく異なることを見出した。また、pBTCTはP3HT同様、最低励起状態は双極子禁制遷移であるが蛍光量子収率は高く、有機発光素子のみならず、有機発光トランジスタをも作製できる可能性があることを見出した。これらの高分子とシリカナノ粒子とのハイブリッド化を行ったところ、F8では蛍光量子収率の向上が見られたが、P3HTでは向上は見られなかった。 塗布型ゲート絶縁膜開発のため、ゾル-ゲル法により有機高分子-チタニアハイブリッドを成膜し、誘電率、絶縁抵抗の測定を行った。フレキシブル基板上への塗布形成のため、このハイブリッドの熱処理温度を200℃程度にしたところ、チタニアは非晶質で、誘電率の大幅な向上は見られず、絶縁性も良好ではなかった。このため、チタニアより誘電率は劣るものの絶縁性に優れたジルコニアのナノ粒子を用いて架橋させたpolyvinylphenol(PVP)とのハイブリッドを作製した。誘電率は6程度にしか向上しなかったが、100nm程度の膜厚でも絶縁性は良好であった。 露点が-70℃程度のグローブボックスシステムを完成させ、次年度の有機デバイス作製が可能となった。
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