クーロン相互作用を高精度に組み込んだ3次元粒子シミュレータを構築した。長距離クーロン相互作用は、各電子と不純物が作るポテンシャルからPoisson方程式を解くことによって得られるクーロン力を、電子の古典的運動方程式に組み込むことで考慮した。その際、全系のエネルギー保存をみたすようにパラメータの最適化を行った。一方、短距離で2体間に働くクーロン相互作用、すなわち短距離クーロン相互作用は、遮蔽されたクーロン・ポテンシャルを摂動とした量子力学的散乱機構として組み込んだ。ただし、従来の散乱機構と異なり、不純物と電子の空間的位置に依存して散乱確率が変化する新たな散乱モデルを導入した。 新たに構築した空間局在性を考慮した不純物モデルと従来のjelliumモデルでシミュレーションを行い、バルク形状での電子移動度の不純物濃度依存性を評価し、本モデルが従来モデルの結果を再現し得ることを確認した。そのうえで、局所的に分布した不純物を反映した短距離散乱が、粒子シミュレーションで実現できることを確認した。その結果、チャネル領域での電子濃度と同程度である10^18cm^-3において、不純物の分布を反映した輸送特性の相違が生じることを見出した。 これらの結果は、離散不純物によって生じるポテンシャル揺らぎを反映した輸送特性の、モンテカルロ法によるはじめての直接的検証と言える。本研究では不純物を一様ランダムに分布させたが、不純物の分布に偏りがある場合、局在化モデルによる輸送特性(移動度の向上、緩和時間の増大等)がより顕著に表れると考えられる。この方針もとで、来年度は偏在した不純物分布のもとでの輸送特性解析をさらに進める予定である。
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