電子間クーロン相互作用を3次元粒子シミュレーションに世界で初めて導入することを研究の主目的としている。具体的には、電子と不純物が作るクーロン・ポテンシャルを、集団運動を引き起こす長距離成分とランダムな熱運動を引き起こす短距離成分に切り分けて、シミュレータに導入する。 ポアソン方程式を適切に解いて、長距離成分を電子の運動方程式に組み込む。また、二体間で働く短距離成分は、遮蔽されたクーロン・ポテンシャルを摂動ポテンシャルとした散乱機構として、導入する。導入方法は(2次元粒子シミュレーションの)従来手法の単純な拡張であるが、エネルギー保存等を指標として、高精度にパラメータを最適化したうえで長距離成分と短距離成分を切り分けるところに、本研究の特徴がある。本年度は、昨年度検討した長距離成分と短距離成分を、同時に3次元シミュレータに導入し、電子輸送特性を以下のように総合的に評価、検討した。 (1)ポアソン方程式と輸送シミュレーションを自己無撞着に結合させた。その際、シミュレーション・パラメータの最適化を各不純物(電子)濃度に対して行った。そのうえで、電子移動度の不純物濃度依存性を評価し、実験結果との比較検討を行い、現アプローチの正当性の確認を行った。 (2)不純物の離散性を考慮するために、空間的に局在した不純物による散乱モデルを構築した。そして、離散不純物でのバルク形状で電子移動度の不純物濃度依存性を評価し、局在モデルと従来モデルが同等の結果を再現し得るかどうかを確認し、局在モデルの正当性を明らかにした。 (3)3次元粒子シミュレータにデバイス構造を組み込むための拡張を行った。
|