本年度は最終目標である100GHzサンプリングΔΣADC実現の鍵となる共鳴トンネル識別器について検討を進めるとともに、周波数変調方式ΔΣADC高性能化のキーとなる線形性の確保に関する新しい提案を行った。具体的な検討項目と成果の概要を以下に示す。 1.100GHzサンプリングの実現には高精度の超高周波クロックが必要という問題がある。ここではそれを解決するために共鳴トンネル論理ゲートMOBILEを用いた新しい構造の識別器を提案した。この方式は相補型のクロックを用いて、クロックの立ち上がり、立下り、両エッジで動作するものであり、実効的に2倍のクロックを加えたのと同じサンプリングレートが得られる。また、出力はNRZとなるため、従来回路との接続も容易である。その基本動作をシミュレーションにより確認した後、設計を行い、現在、回路の試作中である。 2.周波数変調型ΔΣ変調器において最も問題となるのは入力信号を線形性良く、周波数変調信号に変える電圧制御発振器(VCO)の実現である。これまで、我々は高周波のVCOを用い、ミキサーによりダウンコンバージョンすることによってこの問題を緩和できることを示してきた。今年度はこれをさらに拡張し、相補型の入力信号と2つのVCOを用いることにより、偶数時の非線形性をキャンセルする新しい方式を提案した。本方式について回路シミュレーションで検討した後、VDECを用いた試作によりその効果を確認した。
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