研究概要 |
ステガノグラフィは情報保護技術の一つであり,画像,ビデオ,音楽データ等のメディアデータ(ダミーデータ)中に,第三者に知られたくない重要な情報を隠す技術である.ステガノグラフィでは,ダミーデータ中に大量の秘密情報が隠されていても,そのことを第三者に気付かれないことが必要である.一方,埋め込み検出(情報が埋め込まれているか否かの判定)に代表される,ステガノグラフィに対する攻撃は総称してステガナリシスと呼ばれている.本研究の目的は,各種のステガナリシスに対して耐性を有する安全なステガノグラフィを実現することである. JPEG圧縮画像を用いるステガノグラフィ(JPEGステガノグラフィ)では,離散コサイン変換(DCT)係数のヒストグラム形状を保存する埋め込み方法(QIM-JPEG)を既に提案している.JPEGステガノグラフィに対するステガナリシスでは,埋め込み前後での量子化DCT係数の分布(ヒストグラム)の変化を捉えて埋め込み検出を行う場合が多いため,ヒストグラム形状の保存は必須の条件である.本年度は,JPEG2000圧縮画像を用いるステガノグラフィにおいて,離散ウェーブレット変換(DWT)係数のヒストグラム形状を保存するQIM-JPEG2000ステガノグラフィを実現した.提案法は,カイ二乗検定を用いた埋め込み検出に耐性があることを確認した. QIM-JPEGステガノグラフィの安全性を評価するために,埋め込み検出実験を行った.JPEGステガノグラフィに特化した手法であるFridrich法と,ウェーブレット特徴を用いる汎用的なFarid法を用いた.2種類の誤り率を等しくする等誤り率で評価を行った.QIM-JPEGステガノグラフィは従来の代表的なJPEGステガノグラフィであるF5と1比べて,埋め込み検出が困難であることを確認した(500枚の濃淡画像を用い,JPEG圧縮の品質係数90の場合,検1出誤り率はF5で9%,QIM-JPEGで33%).
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