研究概要 |
本年度は,主として,ペアリング暗号の高速実装とアドホックネットワークに対する攻撃に対する安全性の観点から検討を進めた.主な成果は以下の通りである. (1)ペアリング暗号の高速実装 本研究では,3乗根を用いないη_Tペアリングの高速化アルゴリズム[1],およびトーラスT2を用いた高速な最終冪のアルゴリズムを提案した[2].これらのアルゴリズムの改良により,GF(3^m)上のη_Tペアリングを約25%高速化することが可能となった. さらに,上記の提案改良アルゴリズムをソフトウェア実装した.その結果,計算時間は従来から報告されてきているペアリングのソフトウェア実装の中で最も高速に実現出来た.また,携帯電話上にも実装し,実用的な時間で実装することが可能であることを示した. これにより,IDベース暗号やブロードキャスト暗号などペアリングを用いた新たな暗号応用技術が,携帯電話上のアプリケーションとして実現可能となった. (2)ネットワークセキュリティ 最初に,モバイルアドホックネットワークのルーティングに関する脅威を体系的に分類するとともに,新しい攻撃方法であるGhost Attackを提案するとともにそのネットワークに与える影響を定量的に評価した.また,それに対する防御方式も提案し,攻撃を防げることもシミュレーションにより実証評価した. また,最も甚大な被害を与えると予想されるブラックホール攻撃に対する防御方式を提案し,シミュレーションにより定量的に評価することによって,攻撃ノードを避けて安全に通信を継続出来ることを明らかにした.
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