研究概要 |
本年度に行った研究を要約すると次のようになる. 1.離散化量子通信路容量の導出と量子ガウス通信路容量との比較 ディジタル変調によって,符号長無限の極限でどこまで量子通信路容量に近づけるかを明らかにするものである.エネルギー制約条件の下で,減衰通信路を通して伝送された受信平均光子数が0から10個程度までの特性を調べた.具体的には,2,4,8,16相PSK,16値QAM信号による,離散化量子通信路容量を数値的に導出した.その結果,平均光子数:が3個程度までなら,これらの信号によって量子ガウス通信路の容量が,ほぼ達成されることが明らかになった.これは,従来の2元信号の結果の100倍以上のエネルギーに相当する. 2.3相PSK信号による符号化特性の解析 1.の結果に基づき,多元信号による符号化特性を考察するものである.まず,3相PSK信号に対し,擬巡回符号を適用し,復号には,3元擬巡回符号に対して誤り率を最小にする復号であることが証明されているSRMを用いた.その結果,符号長を延ばすことで,超加法的量子利得が得られること,量子ガウス通信路容量に近づくことが確認された. 3.量子符号化変調の検討と多元符号に対する量子最適復号の公式の導出 4相PSKに対する量子符号化変調の検討を行ったが,その特性を調べるにあたり,従来の量子最適復号の公式を拡張する必要が生じ,まず,その拡張を行った.すなわち,これまで,M元対称信号を擬巡回符号化した場合の量子最適復号は,Mが素数の場合にのみ,。効率的に数値計算できる公式が知られていたが,本年度,従来の結果を拡張し,Mが任意の素数べきの場合についても,公式が成立することを証明した.この結果は,非素数元の対称信号である,4,8,16相PSK信号等を用いた量子符号化変調の特性を調ベるため,用いることができると考えられる.
|