IP放送サービスの視聴料金は、大きく分けて、無料、月額定額制、時間従量制の3種類があり、更にサービスごとに様々な料金体系が存在する。昨年度は、VOD形IP放送の料金設定に関する検討を行い、事業者収入が最大となる料金を求めた。視聴料金が低ければ、加入するユーザが多いと想像しがちであるが、必ずしもそうではない。加入ユーザが多くなると呼損率が大きくなり、サービス品質が低下する。そのために、加入を敬遠するユーザも多くなる。これは、ユーザがユーザ独自のサービスに対する評価値とそのサービスの品質から支払意思額を決定し、そのサービスに対して視聴料金を支払って加入する価値はないと判断したためである。また、サービス事業者に関しても、提供しているサービスの呼損率が非常に高い場合には、サーバ規模の拡張などを行い、呼損率の改善を行うことにより更なる収入の増加を図ると考えられる。 そこで本年度は、サービスの品質として呼損率を考え、呼損率と月額定額制視聴料金の支払意思額の関係をアンケート調査より明らかにした。また、IP放送サービスに対する価格弾力性を求め、需要関数に基づくユーザの加入・離脱の意思決定モデルを構築した。サーバ規模の違いとして、同時送出可能ストリーム数の異なる3通りのシステムを想定し、それぞれのサーバ規模ごとに視聴料金に対する事業者収入の変化をマルチエージェントシミュレータにより評価した。その結果、呼損率が小さくなる視聴料金、若しくはサーバ規模を設定することにより、収入を最大化させる最適な視聴料金が存在することを示した。 以上の検討とは別に、各種サービスが混ざったトラヒックモデルを構築するため、トラヒックの測定と分析を行った。また、測定したトラヒックデータを用いて、シミュレーションにおいてトラヒックを発生させる方法の検討を行った。
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