研究概要 |
本年度は,限定合理性のシステム論的分析と,人工システムおける限定合理性モデルの構築,および経済理論による社会システムの理論分析を中心に研究を推進した. 1.限定合理性のシステム論約分析(担当:上田) 対象とするシステムを,仕様・目的とその動作環境に関する情報の完全性から,不完全情報環境下における生産システムにおける問題の困難さの分類を行った.そして,システムの構成要素が知覚可能な情報量の限界や,現実の人間が示すような行動主体の非合理的な意思決定過程など,従来の工学ではシステムの性能を引き下げる要因として考えられてきた限定合理性を明示的に導入することにより,不完全情報下におけるシステムの適応度や目的の満足度が向上する過程を理論的に分析した. 2.人工システムにおける限定合理性モデル構築(担当:藤井) 人工システムに対して限定合理性を導入したモデルを構築し,小規模な生産システムを対象とし計算機実験による検証を行った.知的自律エージェントを構成要素とし,合理的エージェントと限定合理的エージェントの違いを分析した.さらに,エージェントに内部構造を導入することで,限定合理性を有した人工エージェントモデルの構築を行い,システム全体の目的と,システムの構成要素に付与される個別の目的の関係性から限定合理性の有効性について分析を行った. 3.経済理論による社会システムの理論分析(担当:西野) 生物指向型生産システムは,人工システムのみを対象とするのではなく,人工システムと人間との相互作用の実現を目指しており,経済理論の観点から社会システムにおける人間の意思決定過程に関して限定合理性の分析を行った.公共財などを対象に,限定合理的な消費者の購買行動に関して経済理論による解析と,被験者実験によって,人間による意思決定過程の分析を行った.
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