研究概要 |
前年度は(1)温度がコンクリート中での物質拡散速度や鉄筋腐食速度に及ぼす影響を実験的に明らかとすること,(2)上記(1)の結果に対しアレニウス則を適用し,見かけの活性化エネルギーを算出することにより,温度がコンクリート中での物質拡散速度や鉄筋腐食速度に及ぼす影響を定量的に明らかとすること,を主目的とし検討を行った. 本年度の研究では、(3)我が国及びフィリピンでの実構造物において、温度が物質拡散速度や鉄筋の腐食速度に及ぼす影響を測定し、上記(1)、(2)の結果を検証すること、(4)上記(2)の結果をコンクリート中での物質拡散速度および鉄筋腐食速度に反映することにより、温度の影響を考慮した鉄筋コンクリート構造物の寿命予測手法を構築し、その結果を上記(3)の調査結果と比較して妥当性を確認すること、(5)上記(4)の予測手法を用い、地域や季節による温度変動を考慮した鉄筋コンクリート構造物の寿命を算出することを主目的とした。 (i)我が国及びフィリピンにおけるコンクリート中鉄筋の腐食速度に及ぼす温度の影響を、アレニウス則を用いて表現することが可能となった。 (ii)申請者の研究成果であるコンクリート中でのイオン移動式(Nernst-Planck式を基本式とし、共存イオンの影響を表現するDebye-Huckel式および全体のイオン移動を律する電気的中性条件を考慮したイオン移動式)にアレニウス式を加えることにより、温度の影響を考慮したコンクリート中でのイオン移動式を構築することが可能となった。 (iii)(ii)で構築したイオン移動式用いて温度変動を考慮した鉄筋コンクリート構造物の寿命を算出した結果、鉄筋コンクリートの寿命は平均気温の増加に対し指数的に短くなり,東南アジアの温度環境にある都市の寿命は平均気温20℃の温度環境にある都市の70%程度となった.
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